公会計部門が取り組む自治体の公共施設マネジメント支援

日本の多くの自治体は、今まさに転換点に立っています。高度経済成長期に一斉に整備された学校、市営住宅、道路、橋梁といった公共施設が、建設から半世紀を経て一斉に更新時期を迎える老朽化問題に直面しているためです。高度経済成長期の行政は「新しく施設を造ること」が役割の主眼でした。しかし、人口減少社会の到来とそれに伴う税収減という厳しい財政状況下では、全ての施設をこれまで通り維持し続けることは物理的にも財政的にも不可能です。

今、自治体に求められているのは、限られたリソースを最適に配分し、既存の資産を「賢く使う」という、いわば「造る行政」から「賢く使う経営」への転換です。しかし、この変革を実現しようとすると、自治体組織や地域社会の構造に起因する「3つの大きな壁」が必ず立ち塞がります。

全国ほとんどの自治体が「公共施設等総合管理計画」を策定済みですが、その多くが実行フェーズで停滞し、計画が「お飾り」と化しています。その背景には、以下の3つの構造的な「壁」が存在します。

1つ目は整合性の壁です。縦割り行政の弊害により、各部局の計画や「中期財政計画」が総合管理計画と連動していないことが多いです。総合管理計画内で「施設削減」を謳っても、実際の予算編成では従来通りの維持費が承認され続け、計画の実効性が失われてしまいます。

2つ目はデータの壁です。公会計の「固定資産台帳」と各所管課で保有、管理している「施設台帳」が分断されており、データに実態が反映されていないことが多いです。そのため、客観的な根拠(エビデンス)に基づく自治体経営の判断ができず、声の大きい部門の意見や経験則に押し切られてしまうといった障壁があります。

最後3つ目は合意形成の壁です。自治体としては施設の廃止や統廃合に前向きでも、住民にとっては身近な施設がなくなることにはやはり抵抗感を覚えることが多いです。そのため計画策定後も具体的なアクションが回避され、「塩漬け」にされる。これらの壁が組み合わさることで、立派な計画書が現場の当事者意識から遊離し、単なる「お飾り」になってしまうのです。

先述の壁を乗り越える鍵は、建築的な「ハコモノ論理」と財務的な「会計ロジック」の融合にあります。

・正確なデータベースの整備 自治体の「現金主義(単年度予算)」だけでなく公会計の「発生主義(減価償却)」の視点を取り入れたフルコストでの費用算出を行い、固定資産台帳を総合管理計画のデータベースへと精緻化します。加えて建物のハード面の課題に対しては自社開発のDXアプリ等を活用し、現場の点検データを常に「生きた資産情報」として一元管利します。
・精緻な財政シミュレーション(経済合理性の追求) 80年先までを見据えたライフサイクルコスト(LCC)を算出します。ここで重要なのは「予防保全(壊れる前に直す)」によるトータルコストの縮減効果を客観的な数値で示すことです。事後保全から脱却し、予算を平準化させることで、初めて自治体の財政負担を軽減することができるようになります。
・合意形成の支援 自治体全体や施設管理部門としての視点の「危機感」と、各部門や地域住民の「感情的な要望」の間には、必ず大きな隔たりが存在します。ここを乗り越えるために必要なのは、単なる対話ではなく、「客観的な事実(数字)」に基づく共通言語の構築です。森田会計事務所では公会計データを活用し、「この施設を維持した場合、どれだけの財政的負担があるのか」という点まで考慮し、ライフサイクルコストを可視化します。これにより、感情的な対立をフラットな「経営判断」へと引き上げます。また、住民説明会の支援だけでなく、最も困難とされる「庁内各課の縦割りの壁」を崩すための部門横断的ワークショップのファシリテートまで、現場の担当者が自信を持って矢面に立てるような伴走支援を行います。

今、自治体に求められているのは「分厚くて綺麗な計画書」を作ることではありません。必要なのは、痛みを伴う施設の統廃合や最適化を「確実に実行するための仕組み作り」と、それを完遂するための「現場感覚」です。

従来の他社のコンサルティングは、立派な計画を策定して終わりでした。しかし、森田会計事務所が提供するのは、その一歩先を行く「伴走型支援」です。当社は、公会計という「客観的データ」を用いて、建築的なハコモノ論理に偏りがちな議論を「経営判断」へと引き戻そうと取り組んでいます。そして、庁内や地域住民との合意形成という「現場」において、データとシステムを活用して顧客の支援を行っています。