外国子会社にお金を貸す際の注意事項
2018年10月30日更新
お金を貸す際の利率を決定するにあたり『移転価格税制』の検討を行う必要があります
○ 企業が海外の関連企業との取引価格(移転価格)を通常の価格と異なる金額に設定すれば、一方の利益を他方に移転することが可能となる。
○ 移転価格税制は、このような海外の関連企業との間の取引を通じた所得の海外移転を防止するため、海外の関連企業との取引が、通常の取引価格(独立企業間価格)で行われたものとみなして所得を計算し、課税する制度。
では、どのように利率を決定したらいいのか?
『移転価格事務運営要領』で次のように書かれています
(独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法による金銭の貸借取引の検討)
3-7 法人及び国外関連者が共に業として金銭の貸付け又は出資を行っていない場合において、当該法人が当該国外関連者との間で行う金銭の貸付け又は借入れについて調査を行うときは、必要に応じ、次に掲げる利率を独立企業間の利率として用いる独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法の適用について検討する。
(1) 国外関連取引の借手が、非関連者である銀行等から当該国外関連取引と通貨、貸借時期、貸借期間等が同様の状況の下で借り入れたとした場合に付されるであろう利率
(2) 国外関連取引の貸手が、非関連者である銀行等から当該国外関連取引と通貨、貸借時期、貸借期間等が同様の状況の下で借り入れたとした場合に付されるであろう利率
(3) 国外関連取引に係る資金を、当該国外関連取引と通貨、取引時期、期間等が同様の状況の下で国債等により運用するとした場合に得られるであろう利率
(注)
1 (1)、(2)及び(3)に掲げる利率を用いる方法の順に、独立企業原則に即した結果が得られることに留意する。
2 (2)に掲げる利率を用いる場合においては、国外関連取引の貸手における銀行等からの実際の借入れが、(2)の同様の状況の下での借入れに該当するときは、当該国外関連取引とひも付き関係にあるかどうかを問わないことに留意する。
(金銭の貸借取引)
3-6 金銭の貸借取引について調査を行う場合には、次の点に留意する。
(1) 基本通達9-4-2(子会社等を再建する場合の無利息貸付け等)の適用がある金銭の貸付けについては、移転価格税制の適用上も適正な取引として取り扱う。
(2) 国外関連取引において返済期日が明らかでない場合には、当該金銭貸借の目的等に照らし、金銭貸借の期間を合理的に算定する。
上記『移転価格事務運営要領3-7』より、子会社に金銭を貸し付ける際の利率については下記のようになります
<優先順位 1>
外国子会社が親会社から行う借入の「通貨」「借入時期」「返済期間」と同条件の借入を金融機関から行ったとした場合の利率
<優先順位 2>
親会社が子会社へ貸付を行うものと「通貨」「借入時期」「返済期間」と同条件で親会社が金融機関から借入を行ったとした場合の利率
※<優先順位 1>の利率が分かる状況にありながら<優先順位 2>の利率を使うとその差分については、税務調査の際に指摘事項(修正申告)となります
(注) (3-6) 基本通達9-4-2(子会社等を再建する場合の無利息貸付け等)の適用がある金銭の貸付とは、子会社を再建計画に基づき再建するとき等やむを得ない場合の貸付時についての記述です。
(参考)『法人税法基本通達』抜粋
(子会社等を再建する場合の無利息貸付け等)
9-4-2 法人がその子会社等に対して金銭の無償若しくは通常の利率よりも低い利率での貸付け又は債権放棄等(以下9-4-2において「無利息貸付け等」という。)をした場合において、その無利息貸付け等が例えば業績不振の子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行われるもので合理的な再建計画に基づくものである等その無利息貸付け等をしたことについて相当な理由があると認められるときは、その無利息貸付け等により供与する経済的利益の額は、寄附金の額に該当しないものとする。
(注) 合理的な再建計画かどうかについては、支援額の合理性、支援者による再建管理の有無、支援者の範囲の相当性及び支援割合の合理性等について、個々の事例に応じ、総合的に判断するのであるが、例えば、利害の対立する複数の支援者の合意により策定されたものと認められる再建計画は、原則として、合理的なものと取り扱う。